2023年の1月下旬。仙台市の佐藤啓壮(けいぞう)さん(55)は、サウナ発祥の地・フィンランドの凍った湖の上にいた。
零下15度の外気に凍えながら、自身が開発したサウナ専用のテントと薪(まき)ストーブの「性能評価」を試みたのだ。ストーブにシラカバの木をくべると、30分後、テント内の室温は100度を超えた。噴き出す汗。
「うふぁあ~~~」
雪の上に寝転ぶと声が出た。
「北極圏で性能を試した日本のサウナ用テント。他にはないでしょう」。そう笑う佐藤さんは、サウナ用品を開発する合同会社の代表だ。モットーは「とにかくおもしろいことをしたい」。
出身は宮崎県。理学療法士の資格を持つトレーナーとして、自動車大手企業などでモータースポーツ選手らを支えてきた。世界最高峰のヨットレース、アメリカ杯の日本チームにも帯同した。
東北との縁は2008年。リハビリテーション学科を設けた東北福祉大に専任講師としてやってきた。その後、東北大の特任講師として、動作解析センサーを使った次世代健康器具の開発などに関わった。職人やエンジニアと仕事をするうちに身についた知識と技術が、のちにサウナ作りに生かされた。
16年、高齢者の運動機能を改善する自身の研究に興味を持ったフィンランドの大学に招かれた。湖畔に点在する公衆サウナへ足を運んだ。薪ストーブの柔らかい熱と、シラカバの香り漂うスチーム。我慢比べをする雰囲気もなく、男女一緒にたわいない言葉を交わす。湖につかり、ほてった体を冷ます。サウナの後は、ビール片手にソーセージを焼いて塩分を補給。体も心もほぐれ、至高のリラックスを体験した。
「おじさんが威張って座っている」というサウナのイメージが180度変わった。
やがて世界はコロナ禍に突入。毎年通ったフィンランドへも足止めされた。
「ロウリュ」で変形しないストーブを
仕方ない。自然の中で楽しむ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル